昨年1.3点差で落ちた受験生の令和元年予備試験再現答案

平成最後の予備試験論文試験で後1.3点差で落ちました。忘れないうちに令和元年の予備試験論文再現答案を記録します。

令和元年予備試験論文問題再現答案ー刑事実務基礎ー

第1 設問1について

1 Aは、本件被疑事実について、犯行現場にはいなかったとして容疑をに否認しており、罪証隠滅を図る主観的可能性が認められる。

また、犯行時刻にどこにいたのかを明言しておらず、接見を通じて、他人に自らのアリバイを求めることがなしえ、罪証隠滅の客観的可能性が認められる。

2 したがって、裁判官は、Aが罪証隠滅をする疑いがあるとして、本件決定をなしたと考えられる。

 

第2 設問2について

1 直接証拠とは、その証拠により主要事実を直接証明する証拠をいう。以下、A及びBについて、それぞれ検討する。

⑴Bについて

ア 本件供述録取書には、本件被疑事実を目撃したWの供述が記載されている。Wは、本件被疑事実と一致する事実を目撃しており、かかる供述から何者らにより本件被疑事実に記載されている犯罪がなされたことが証明できる。また、Wは、犯人のうちの一人が警察官が提示した2番の写真の男であることを供述しており、その写真の男はBであったことから、Bが犯人であることが証明できる。

イ 以上により、本件被疑事実をなした犯人がBであることを証明することができ、直接証拠にあたる。

⑵Aについて

ア まず、Bと異なり、Wの証言だけでは、本件被疑事実をなした犯人がAであると証明することはできないため、直接証拠にはあたらない。

イ もっとも、本件被疑事実に記載された犯罪はBと共同してなされており、その犯行態様から犯人はBと知り合いであったことが推認される。そして、犯行時刻の10分前頃にBとともにAが犯行現場付近のコンビニエンスストアにいたこと及びその外見的特徴が極めて一致していたことが判明しており、Aが犯人であることが推認される。

 

第3 設問3について

1 「傘の先端でその腹部を2回突いた」ことについて

⑴ 傷害罪の実行行為といえるためには、身体の生理的機能に障害を生じさせる程度の暴行が加えられる必要があるところ、AはVから肩をつかまれたことに驚いて勢いよく振り返ったことにより、偶然、傘がVの腹部にあたったにすぎず、実行行為性は認められない。

⑵ また、傷害罪が成立するためには、傷害罪の構成要件該当事実の認識認容をしていたことが必要であるところ、Aにその認識はないため故意にかける。

2 「足でその腹部及び脇腹等の上半身を多数回蹴る暴行を加え」たことについて

⑴ Aには、以下のとおり、正当防衛(刑法36条1項)または過剰防衛(同条2項)が成立する。

ア VはAに対し、拳骨で殴り掛かってきており、Aの身体に対して、「急迫不正の侵害」が認められる。

イ Aは自らの身を守るために反撃を加えており、防衛の意思が認められ、「自己または他人の権利を防衛するため」といえる。

ウ 「やむをえずにした行為」とは、反撃行為が自らの身を守るために必要最小限であることをいう。

Aの反撃行為は足で上半身を多数蹴るものであったが、Vが拳骨で殴り掛かってきた攻撃を防ぐためには必要であり、再度、Vが攻撃を加えてこないようにするためにかかる反撃行為を行うことは相当であったといえる。

エ 仮に、相当とされる程度を超えていたとしても、Aは自己の身を守るために反撃を加えており、過剰防衛の趣旨たる責任減少が認められる。

 

第4 設問4について

1 弁護士は規定上、誠実義務(5条)と真実義務(同条)を負っている。そして、Aの弁護士は、Aから犯行を行ったこと及び無罪を主張してほしい旨の依頼をなされており、誠実義務と真実義務が対立しているといえる。

そこで、かかる義務が対立した場合に、Aは誠実義務を優先させて、Aの無罪を主張することができるのか問題となる。

⑴ この点について、犯罪事実の挙証責任は検察官にあること、及び依頼人の意思を尊重(22条1項)する必要があることから、誠実義務が真実義務に優先されると解する。もっとも、弁護士の使命に社会正義の実現(1条)があることにかんがみ、虚偽の事実により、殊更に真実をゆがめるような主張をすることは許されないと考える。

⑵本件においては、Aの弁護士にかかる事情は認められず、Aの意思を尊重して無罪の主張をすることができる。

 

第5 設問5について

1 Bは証人尋問において、B自身の審理における被告人質問と異なり、本件被疑事実に関するAの関与について否認している。

そこで、検察官は、B自身の公判期日における供述を記載した公判調書の証拠調べ(刑事訴訟法298条)を請求することが考えられる。

1 そして、Bのかかる供述は公判廷外における供述でAの犯人性という要証事実との関係で、その内容の真実性を立証するものであるため、伝聞証拠(320条1項)にあたる。そして、弁護士が不同意(326条)しているため、証拠能力は原則として認められない。

3 そこで、検察官としては、Bの供述が伝聞例外(324条2項、321条1項3号)にあたるとして証拠能力が認められると主張する。

⑴ まず、BはAとの間で共犯者であるが、Aとの間ではなお「被告人以外の者」である。そして、BはかたくなにAの犯行への関与を拒み「供述不能」にあたる。また、共犯者たるBの供述は、Aの犯人性を証明するうえで「その供述が犯罪事実の存否に欠くことができないもの」といえる。さらに、共犯者たるAを庇うために供述を拒否していると考えられ、また、Bの供述は他の客観的証拠とも整合しているため、「特に信用すべき状況の下」でなされたといえる。

⑵よって、伝聞例外にあたり、証拠能力が認められる。

 

 

 

 

 

自己採点(去年総合C、おそらく単体B)

B+

最後の伝聞例外で失敗した。最初、裁面調書で書いていたが、署名押印のところで、あれ?Bって署名押印してないよな。というか、公判廷の証言だから伝聞証言じゃないか?そうしたら、特信性の要件も書けるし。という謎理論に走ってしまった。ただ、概ねできているので、Bくらいはもらえると考える。

 

感想

去年よりは簡単だった。やっぱり、刑事実務基礎は過去問から出る。