昨年1.3点差で落ちた受験生の令和元年予備試験再現答案

平成最後の予備試験論文試験で後1.3点差で落ちました。忘れないうちに令和元年の予備試験論文再現答案を記録します。

令和元年予備試験論文問題再現答案ー刑訴法ー

第1 設問について

1 本件勾留請求の適法性について検討する。

⑴ 勾留請求においては、同一の被疑事実について逮捕を前置することが求められているところ(逮捕前置主義)、甲は通常逮捕状により逮捕された同一の被疑事実について勾留請求がなされている。

⑵ 次に、通常逮捕された令和元年6月6日午後9時10分から「48時間以内」(刑事訴訟法203条1項)に甲はH地方検察庁検察官に送致されている。そして、検察官に送致された同月7日午前8時30分から「24時間以内」(205条1項)に甲の勾留請求がなされている。

⑶ よって、本件勾留請求は適法である。

 

2 もっとも、先行する任意同行が実質的逮捕といえないか。実質的逮捕にあたれば、令状主義(憲法33条、199条1項)に反し違法となるため問題となる。

⑴まず、任意同行については、本人の意思に基づくものであれば、任意捜査(197条1項本文)として許される。もっとも、任意同行に応じるか否かについて本人の意思が制圧されており、強制的に連行するような場合には実質的逮捕に当たり、令状主義及び法(203条以下)が身体拘束につき厳格な規制を設けた趣旨が没却されててしまうため許されないと解する。

そこで、①同行の時間・場所、②同行を求めた態様、③同行を求める必要性及び④被疑者の態度等諸般の事情を総合的に判断する。

⑵ 本件では、午前3時頃という深夜に警察署まで同行を求めており、本人の意思が制圧されうる状況にあったようにも思える。もっとも、甲は遅くとも午前2時30分頃には路上に徘徊しており、その存在を認めたPらにより職務質問警察官職務執行法2条)が適法になされていたことを踏まえると、このような時間帯に警察署への同行を求めることもやむを得ないといえる(①)。そして、甲は本件事件の犯人の人相及び着衣が酷似しており、また、甲が自らポケットから落としたクレジットカードはV名義のものであり、本件事件の被害品である。本件事件は、6月5日午後2時頃発生しているところ、それから12時間程度しか経っていない中で甲が本件事件の被害品を所持していること及びその所持の理由が納得のいくものでないことをかんがみると、本件事件の犯人である高度の嫌疑があり、同行を求める必要性は極めて高いといえる(③)。

もっとも、甲は「俺はいかないぞ。」などど言って、パトカーの屋根を両手でつかんで抵抗していることを踏まえると、甲が同行に応じない意思は明確であった。(④)。それにもかかわらず、抵抗する甲をむりやりパトカーに乗車させて、両脇を警察官で固めて警察署に連行しており、その態様は強度である(②)。

以上より、甲には本件事件の犯人である高度の嫌疑が認められるものの、甲が明確に同行に応じない旨の意思表示をしているにもかかわらず、Pらはその意思を制圧して連行しているため、実質的逮捕にあたる。

3 そのため、先行する身体拘束が実質的逮捕にあたり違法となる場合、後行する勾留請求にどのような影響が生じるのか問題となる。

⑴ 被疑者の身体拘束に際し、裁判官による事前審査を求め、もって被疑者の人権に配慮した令状主義の要請は厳格に貫かれるべきである。もっとも、常にこれを認めないとすると捜査の実効性確保の観点から相当ではない。

そこで、先行する手続に重大な違法がある場合に勾留請求が認められないものと解する。

⑵ 本件では、無令状の逮捕であり、令状主義に反するため、その違法は重大であるように思える。もっとも、実質的逮捕時において、甲には本件事件に関する高度の嫌疑が認められていた。そうだとすれば、Pらは通常逮捕の逮捕状を請求した上で、甲に任意同行に応じるよう説得しつつ留め置くこともできたといえる。また、実質的逮捕を起点としても、勾留請求までの時間的制約(203条、205条)は守られていた。

第2 以上より、先行する手続には重大な違法は認められず、本件交流請求は適法である。

 

 

 

自己評価(昨年D)

B~A-

重大な違法の判断基準として緊急逮捕といえる場合に該当するかということは頭にあったが、本件では緊急逮捕の要件を満たすまでの証拠なく、そのためPらは任意同行という形をとったように思われる。

ただ、犯人の外見と酷使しており、被害品を理由もなく所持していたことは通常逮捕状の要件には当てはまるといえ、その後に被害者の供述を追加して通常逮捕していることを踏まえると、本件交流請求を認めないのは違和感を感じた。

本件では、甲が任意同行に応じなければ、通常逮捕状の請求をして、その発布がなされるまで頑張って留め置くべきであり、その手段を誤ったことにすぎないこと、通常逮捕自体は適法に前置していること、時間制限を守っていることを踏まえれば適法にすべきような気がする(採点者たる実務家の観点から見て)。

ただ、昨年はD評価であり、本当のところはよくわからない。

 

感想

伝聞は実務基礎で聞くという方針なのだろうか。ただ、いずれにしても、刑事実務基礎で包括的に手続が問われるので、万遍なく勉強する必要があると思われる。

敢えて来年を予想するとすれば、さすがにそろそろ捜索・差押えがくるのではなかろうか。