昨年1.3点差で落ちた受験生の令和元年予備試験再現答案

平成最後の予備試験論文試験で後1.3点差で落ちました。忘れないうちに令和元年の予備試験論文再現答案を記録します。

令和元年予備試験論文問題再現答案ー民訴法ー

第1 設問1について

1 本件訴訟が固有必要的共同訴訟(民事訴訟法40条)であれば、X1およびX2が原告とならない限り、Yの主張のとおり、当事者適格を欠くものとして、本件訴えが却下されることになる。そこで、固有必要的共同訴訟の判断基準が問題となる。

⑴ この点について、訴えの提起は、敗訴すると当該目的物の処分をなしたことと似た性質を有するといえる。そのため、目的物の管理処分権限が複数人にある場合には、その全員によって訴えを提起しないと紛争の実効的解決を図れないといえ、固有必要的共同訴訟によるべきである。また、紛争の合理的解決という点から、訴訟法的要素も考慮すべきである。

⑵ 本件訴訟は、甲土地の売買契約に基づき所有権移転登記手続を請求しており、甲土地はX1及びX2の共有となっている。そうだとすれば、甲土地の管理処分権限はX1及びX2それぞれに認められているといえ、片方による訴訟提起によっては紛争の合理的解決を図ることができない。

⑶ したがって、本件訴訟は固有必要的共同訴訟である。

2 そうだとすれば、X1は本件訴訟の訴状がYに送達される前に死亡しており、固有必要的共同訴訟の当事者適格を満たしていないため、本件訴えは却下されるように思われる。もっとも、本件訴訟の手続は、争点整理手続終了近くまで進行しており、かかる状態の訴えを却下することは、訴訟不経済でありX2の期待を損なうものといえる。

 そこで、訴状送達前においても実質的な訴訟継続があったとして、当然承継(124条1項1号)を類推適用できないか検討する。

⑴ 訴訟継続は、二当事者対立構造が発生する訴状送達時に生じる。もっとも、既に訴えが提起されており、訴状が送達される前においても原告が弁護士と訴訟進行について打ち合わせする等していれば、実質的な訴訟継続が認められる。

⑵ 本件訴訟はすでに提起されており、X1はX2とともに本件訴訟の進行について弁護士と打ち合わせ等を行っていたことから、実質的な訴訟継続が認められる。

⑶ したがって、本件訴訟においては、実質的な訴訟継続が認められ、X1の死亡により、その相続人たるYがその地位を承継するため、当事者適格は認められる。

3 以上により、Yのかかる請求は認められない。

 

第2 設問2について

1 既判力とは、後訴における前訴の通用力ないし拘束力をいう。

そして、前訴の既判力は、口頭弁論終結前に現れた第三者にはその効力を生じない(115条1項3号参照)。そのため、前訴の既判力はZには及ばないのが原則である。もっとも、BはZと通謀し、前訴の確定判決を債務名義とする強制執行から逃れるために本件贈与契約をなしており、このような場合にも既判力が生じないとすると、紛争の実質的な蒸し返しとなり妥当でない。そこで、既判力を拡張できないか検討する。

⑴ この点について、既判力の根拠は、手続保障充足により自己責任を問える点にある。そこで、強制執行から逃れるために、訴訟の目的物を譲渡しており、その両当事者が実質的に同視できるのであれば、手続保障充足による自己責任を問えるといえる。

⑵ 本件では、Bは息子たるZと通謀し、強制執行を逃れるために甲土地の贈与契約を締結しており、BとZは同視できるといえ、手続保障充足による自己責任を問えるといえる。

⑶ したがって、既判力を拡張し、民事訴訟法115条1項1号を類推適用して、Zに対して既判力の効力を及ぼすことができる。

2 次に、Zは後訴において、X1らとYとの間で売買契約は成立していないと主張しているところ、既判力の効果によってかかる主張をなすことは許されないのではないか検討する。

⑴ 既判力とは、判決主文たる訴訟物にその効力を生じる(114条1項)。

⑵ そのため、X1らとYとの間で売買契約が成立していないとの主張は、前訴の矛盾となるものであり、既判力に抵触して許されない。

3 以上より、Zのかかる主張は認められない。

 

 

 

 

 

自己採点(昨年E)

頼む!D

設問1は概ねできた気がしたけど、気がしただけかもしれない。

そして、信義則と争点効を封じられたらもう何もできないよ。

 

 

 

感想

苦手な既判力は信義則でごまかしてしたけど、それを嘲るように封じてきた。

⑴ 既判力とは、判決主文たる訴訟物にその効力を生じる(114条1項)。

⑵ そのため、X1らとYとの間で売買契約が成立していないとの主張は、前訴の矛盾となるものであり、既判力に抵触して許されない。

なんだこれ。なんとも後味の悪い予備試験の終わりだ。

 

 

総括

昨年通り、民法と民訴に一抹の不安はあるものの、実務基礎を中心としたほかの科目が頑張ってくれたおかげで合格したものと推定される。

 

昨年の感触と照らし合わせると

憲法  B~

行政法 D~

刑法  B~

刑訴法 B~

刑実  B~

民実  B~

民法  E~

商法  B~

民訴法 D~

 

総合成績200位~300位くらいな気がする。

なお、一般教養は面倒で書かなかったけど、B以上は絶対ある。

セミのネット無料講座でバーテンのような怪しい風貌をした講師が話していた内容がそのままでたため。

「予備試験 一般教養論文 対策」とかで調べるとYouTubeで見れるのでお勧めです。

   

令和元年予備試験論文問題再現答案ー商法ー

第1 設問1について

1 本件取締役決議において、決議事項として予定されていないDの辞任決議をなしたことは、その招集手続に会社法368条1項に違反があると主張することが考えられる。

⑴ この点について、取締役会は各取締役が出席することが求められており、迅速な業務執行に関する意思決定をすることが求められる。そのため、株主総会の招集手続(299条)と異なり、決議内容を事前に知らせることまで求めていない。

⑵ したがって、Cが本件取締役会において、決議事項として予定されていなかった決議をすることも適法である。

2 次に、Dは平取締役にすぎず、本件決議について特別な利害関係有していないにもかかわらず、特別利害関係人として議決権を行使させないことは会社法369条2項に違反すると主張することが考えられる。

⑴ この点について、「特別の利害関係を有する」とは、当該取締役が会社のために中立な立場で議決を行えない場合をいう。

⑵ 本件では、確かにDは平取締役に過ぎないが、自らの解任決議に際し、会社利益保護の観点から中立に議決権を行使しえたとはいえず、Cのかかる措置も適法である。

⑶ なお、このように解すると、突然不意打ちのように自らの解任決議をなされたDにとって酷であるように思われるが、Dは本件取締役会決議において議決には加われなかったものの、一応自らの意見を他の取締役に伝えたといえるので、やむを得ないと解する。

 

第2 設問2について

1 CがDの有する甲社株式40株の議決権行使を認めなかったことは、その決議の方法が「著しく不公正」(831条1項1号)であるため、本件株主決議は取り消されるものであると主張することが考えられる。

⑴ まず、甲社の定款には、譲渡による甲社株式の取得について甲社の取締役会の承認を有する旨の定めがあり、非公開会社である。そのため、甲社株式の譲渡には取締役会の承認が必要となるのが原則である。

⑵ もっとも、Dは甲社株式を会社分割により取得しており、「譲渡」(127条)にあたるのか問題となる。

ア この点について、会社分割は組織的行為であるが、実質的に株主の地位に移転が生じるものといえるため、「譲渡」にあたると解する。

イ そして、本件会社分割は専ら甲社株式を移転させることを目的としており、「譲渡」にあたるため、Dは譲渡の承認の請求をすべきであったと思われる。

⑶ しかし、本件会社分割による株式の譲渡は、株主の構成要素に変更を生じさせておらず、会社にとって好ましくない株主が株式を取得することを防ぐために、譲渡制限株式について取締役会の承認を必要とした法(137条)に反しないため、例外的に許されるのではないか問題となる。

ア この点について、確かに同法の趣旨は、会社経営の安定を図るために会社にとって好ましくない者が取締役会の承認なく株主たる地位を有することを防ぐ点にある。しかし、非公開会社では、株主の持株比率に対する期待を保護する必要があることから、株主の構成要素に変更を生じていなくても、持株比率に変更があれば、取締役会の承認が必要となると解する。

イ 本件では、株主間での株式譲渡であるが、その持株比率に変動が生じているため、取締役会の承認が必要となる。そして、Dはかかる承認を得ていないため、会社との間では甲社株式40株の取得は無効であり、その議決権を行使することはできない。

ウ このことは、Dにとって酷であるように思われるが、Dは取締役会に株式取得を承認するよう求めることができ、Cのかかる態度からすれば、みなし承認(145条1項)された可能性も認められたため、かかる手続を怠ったDは保護に値しない。

2 次に、死亡していたAが有していた甲社株式は100株と全株式のうちの半数を占めており、かかる株式の議決権が行使されないことは、「議決権の過半数」(309条1項)を満たしておらず、「法令」(831条1項1号)に違反すると主張することが考えられる。

⑴ この点について、Aの死亡により、共同相続人の間で株式が準共有(民法267条ただし書)される。そのため、遺産分割手続が終わるまで、「議決権を行使することができる」(309条1項)とはいえない。

⑵ したがって、Aが有していた株式100株を除いて本件株主総会決議をなしたことも適法である。

3 以上より、Dのかかる請求は認められない。

 

 

 

 

 

自己採点(昨年B)

A~B

概ね論点は拾えたこと、会社法を得意とする受験生は少ないため相対的に評価されることを踏まえたため。

 

 

 

感想

商法は力が安定しやすいので頑張るべき科目だった。

今年は、3年周期の組織が出ると思い、詐害的会社分割のヤマをめちゃくちゃ準備して、本番で会社分割の単語を見たとき天にも昇る思いだったのに、結局関係なくて震えた。

来年は、経営判断の原則、体制構築義務が熱いと思われる。

令和元年予備試験論文問題再現答案ー民法ー

第1 設問1について

1 DのCに対する請求が認められるためには、①Dが本件土地の所有権を有し、②Cに占有権限が認められないことが必要である。以下、検討する。

⑴ Cは平成20年4月1日、Aから本件土地を贈与されているところ、Aの相続人たるBは本件土地上にCが居住するC名義の本件建物があることを知ってた上で、本件土地の所有権移転登記を有している。そこで、両者は民法177条により対抗関係に立つのか問題となる。

ア 「第三者」(同法)とは、当事者及びその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう。

イ BはAの死亡により、その地位を相続(882条、887条)しているため、Cとの関係では「第三者」にあたらない。

⑵ もっとも、Bは本件土地の所有権移転登記を前提として、Dのために抵当権を設定している。そして、抵当権実行により、Dは本件土地を買受けており、C及びDのいずれが優先されるのか問題となる。

ア この点について、A(B)を起点として二重譲渡類似の関係が認められるといえる。そこで両者は、177条の対抗関係に立ち、本件土地の登記を先に有した者が優先されると解する。

 そして、Dは、本件土地の所有権移転登記を平成29年12月1日に具備しているため、その所有権を得たといえる。

⑶ 以上より、Dに本件土地の所有権が認められる。

2 そうすると、Cは本件土地の上に存在する本件建物の所有権を有しているものの、借地権(借地借家法10条)たる占有権限を有していないため、本件土地上に存在する本件建物を撤去して、本件土地を明け渡さなければならないのが原則である。

もっとも、これはCにとって著しく酷であり、本件建物を撤去されなければならないとすると社会経済上有益であるとはいえないため、Cを保護する法律構成を検討する。

⑴ この点について、抵当権の担保的機能の重要性及び何ら負担ない土地の所有権を得ることを期待する抵当目的物の買受人の犠牲の下、自ら所有権移転登記手続きを怠った者を保護するのは相当ではない。

そこで、抵当権者が抵当権設定当時に抵当目的物たる土地上に建物が存在していることを認識しており、その存在を前提として抵当目的物の担保的価値を評価している場合に、抵当権者とその買受人が同一であれば、信義則上(1条2項)、借地権を認めることができる。

⑵ 本件では、Dは抵当権設定当時、本件土地上に本件建物が存在することを認識しており、その存在を前提として担保価値を評価している。そして、本件土地の買受人はDであり抵当権者と同一であるため、借地権を認めてもDに酷であるとはいえない。

⑶ したがって、本件土地についてCに占有権限が認められる。

3 以上より、Dは本件土地の所有権を有してはいるものの、Cにその占有権限が認められるため、かかる請求は認められない。

 

第2 設問2について

1 CとDは、177条の対抗関係に立つため、CのDに対する請求は認められないように思える。

2 しかし、Cは本件土地を平成20年4月1日から占有しているため、所有権の取得時効(162条2項)が認められる結果、Cのかかる請求が認められるのではないか問題となる。

⑴ 取得時効の趣旨は、永続した事実状態の尊重にあるところ、これは自己の所有物であっても異ならないことから、自己物についても取得時効は認められる。

⑵ そして、Cは本件土地をAから贈与による引き渡しを受け、かかる時点でその占有権限の取得につき、「無過失」である。

⑶ また、Cは平成20年4月1日から同30年11月1日に至るまで「10年間」「占有」しており、かかる期間継続して占有していたと推定される(186条2項)。

⑷ さらに、「所有の意思」、「平穏かつ公然」の推定(同条1項)を覆す事情も存在しない。

⑸ 以上により、Cは本件土地の所有権につき抵当権の負担のない所有権を取得時効により得ることができるように思える。

3 もっとも、抵当権は登記により公示されており、抵当権者の抵当目的物への優先弁済請求権行使への期待は保護に値する。そこで、取得時効により抵当権の負担のない所有権を得ることが相当といえるか問題となる。

⑴ この点について、抵当権が設定された後に抵当目的物の占有を始めた者については、抵当権者の抵当目的物への優先弁済請求権を保護する必要があることから、抵当権は消滅しないと考えられる。

⑵ 本件では、Cは本件土地に抵当権が設定される前から占有しており、抵当権者の期待を保護する必要は認められない。

4 以上より、Cは本件土地について、抵当権の負担のない所有権を得ることができ、Cのかかる請求は認められる。

 

 

 

自己採点(昨年F)

設問1で法廷地上権は思い浮かばなかった。というよりもよくわからないまま177条の第三者の定義を書いた時点で、Bが包括承継人であることに気付くレベルであった。

ただ、概ねそれなりの理論構成で妥当な結論に至っているような気がするし、法廷地上権の設定に気付けた受験生がそれほど多いとも思えない。

また、設問2は時効以外思いつかなかったから、よくわからないことを書いてしなったことが致命傷になっていないことを願う。

Fじゃなければいい。

 

 

感想

昨年Fで鬼門であった民法が引き続きハデにやらかしてくれた。

民法は最悪わからなかったら、原則論から問題文の事情を書きまくって妥当な結論に導くという最終奥義を使ったことがプラスになっているとうれしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

令和元年予備試験論文問題再現答案ー民事実務基礎ー

第1 設問1について

1 ⑴について

AY間の保証契約に基づく保証債務履行請求権

2 ⑵について

YはⅩに対し、200万円を支払え

3 ⑶について

①(あ)の債務について、保証するとの合意をなした。

②保証契約

③書面

④AはXに対し(あ)の債務を200万円で売った。

4 ⑷について

Xは本件訴訟の確定判決を債務名義(民事執行法22条1項1号)として、甲土地の強制競売を実施するために執行分付与(26条)の申し立てをなすべきである。

 

第2 設問2について

1 ⑴について

①譲渡禁止特約の抗弁

②債権譲渡がされたという請求原因事実と両立し、その法的効果を障害させる効果を生じさせるため。

2 ⑵について

乙絵画を所有していた

3 ⑶について

①必要である

②代物弁済(民法482条)は、本来の給付に代わるものであり。その目的物を引き渡すことが必要であるため。

 

第3 設問3について

①主張すべきでない

民法467条1項は債権譲渡の対抗要件として債務者への通知を求めているところ、Yの主張によると債務者Bには通知がなされている。そのため、保証債務の附随性によりYにもその効果が及ぶ。

また、Yは保証人であり債務を負担する地位に有しないため、債務者にはあたらず、Yに対して通知をする必要はない。

したがって、Yの主張は、請求原因事実と両立するものの、その法的効果に何ら影響を生じさせないため抗弁にはあたらない。

 

第4 設問4について

1 本件借用証書は、金銭の消費貸借にかかる意思表示が記載されており、処分証書にあたる。そのため、形式的証拠能力が認められれば、特段の事情がない限り、実質的証拠能力が認めらえれる。

そして、以下のとおり、形式的証拠能力が認められ、特段の事情もないことから、Yが保証契約を締結した事実が認められる。

2 民事訴訟法228条1項において、文書はその提出者が真正に成立されたことを証明することが求められる。そして、同法4条において、本人の意思に基づいた押印があるときは、その文書が真正に成立したものと推定される。ここで、我が国においては、印章は厳重に保管されて他人が勝手に持ち出すことができないという経験則があるため、文書に本人の印章による押印が認められる場合には、本人の意思に基づきて押印されたことが推定される(事実上の推定)。

3 Yは本件借用証書に自らの印章があることは認められているものの、それはBにより盗用されたものとして事実上の推定を争っている。そして、事実上の推定は立証責任を転換させるものではなく、Yにより合理的な疑いを生じさせる程度の反証がなされれば、推定は破られる。

そこで、合理的な疑いを生じさせる程度の反証があったといえるのか問題となる。

⑴ YはBと幼少の頃から仲が良いと述べて、自らの大事なものを容易に見つけることができたと主張している。もっとも、現在に至るまで両者が密接な関係にあるとは認められない。

⑵このような関係のBがYがプライベートな空間である寝室にタンスの引き出しの中に厳重に保管している印鑑を見つけ出すことができたとは考えにくい。また、YはBが泊りに来た2泊の間で外出している際に印鑑を探し出せたと述べているが、このような短時間で印鑑を見つけ出せたとは考えにくい。

⑶Bは突然Yの家に泊まりに来ており、両者が幼少の頃からの知り合いだったことを踏まえると、BはYに保証人になることを依頼するために来たと考えるのが自然であり、Yを説得するために2泊を要したと考えるのが自然である。また、虚偽の供述をする必要性がないYの母親がYから保証の件を聞いていることからも、Yは自らの意思で保証をなしたといえる。

4 以上により、Yは合理的な疑いを生じさせる程度の反証をなしていないため、Xの主張は認められる。

 

 

自己採点(去年総合C、おそらく単体D)

B+

ちょくちょくミスはあるが、設問4が会心のデキであると考えているため。

 

 

感想

保証は、塾模試及びハイローヤーで的中。

ただ、民事実務は勉強すれば安定して高得点をとれる科目であるため、万全の準備が必要である。

 

令和元年予備試験論文問題再現答案ー刑事実務基礎ー

第1 設問1について

1 Aは、本件被疑事実について、犯行現場にはいなかったとして容疑をに否認しており、罪証隠滅を図る主観的可能性が認められる。

また、犯行時刻にどこにいたのかを明言しておらず、接見を通じて、他人に自らのアリバイを求めることがなしえ、罪証隠滅の客観的可能性が認められる。

2 したがって、裁判官は、Aが罪証隠滅をする疑いがあるとして、本件決定をなしたと考えられる。

 

第2 設問2について

1 直接証拠とは、その証拠により主要事実を直接証明する証拠をいう。以下、A及びBについて、それぞれ検討する。

⑴Bについて

ア 本件供述録取書には、本件被疑事実を目撃したWの供述が記載されている。Wは、本件被疑事実と一致する事実を目撃しており、かかる供述から何者らにより本件被疑事実に記載されている犯罪がなされたことが証明できる。また、Wは、犯人のうちの一人が警察官が提示した2番の写真の男であることを供述しており、その写真の男はBであったことから、Bが犯人であることが証明できる。

イ 以上により、本件被疑事実をなした犯人がBであることを証明することができ、直接証拠にあたる。

⑵Aについて

ア まず、Bと異なり、Wの証言だけでは、本件被疑事実をなした犯人がAであると証明することはできないため、直接証拠にはあたらない。

イ もっとも、本件被疑事実に記載された犯罪はBと共同してなされており、その犯行態様から犯人はBと知り合いであったことが推認される。そして、犯行時刻の10分前頃にBとともにAが犯行現場付近のコンビニエンスストアにいたこと及びその外見的特徴が極めて一致していたことが判明しており、Aが犯人であることが推認される。

 

第3 設問3について

1 「傘の先端でその腹部を2回突いた」ことについて

⑴ 傷害罪の実行行為といえるためには、身体の生理的機能に障害を生じさせる程度の暴行が加えられる必要があるところ、AはVから肩をつかまれたことに驚いて勢いよく振り返ったことにより、偶然、傘がVの腹部にあたったにすぎず、実行行為性は認められない。

⑵ また、傷害罪が成立するためには、傷害罪の構成要件該当事実の認識認容をしていたことが必要であるところ、Aにその認識はないため故意にかける。

2 「足でその腹部及び脇腹等の上半身を多数回蹴る暴行を加え」たことについて

⑴ Aには、以下のとおり、正当防衛(刑法36条1項)または過剰防衛(同条2項)が成立する。

ア VはAに対し、拳骨で殴り掛かってきており、Aの身体に対して、「急迫不正の侵害」が認められる。

イ Aは自らの身を守るために反撃を加えており、防衛の意思が認められ、「自己または他人の権利を防衛するため」といえる。

ウ 「やむをえずにした行為」とは、反撃行為が自らの身を守るために必要最小限であることをいう。

Aの反撃行為は足で上半身を多数蹴るものであったが、Vが拳骨で殴り掛かってきた攻撃を防ぐためには必要であり、再度、Vが攻撃を加えてこないようにするためにかかる反撃行為を行うことは相当であったといえる。

エ 仮に、相当とされる程度を超えていたとしても、Aは自己の身を守るために反撃を加えており、過剰防衛の趣旨たる責任減少が認められる。

 

第4 設問4について

1 弁護士は規定上、誠実義務(5条)と真実義務(同条)を負っている。そして、Aの弁護士は、Aから犯行を行ったこと及び無罪を主張してほしい旨の依頼をなされており、誠実義務と真実義務が対立しているといえる。

そこで、かかる義務が対立した場合に、Aは誠実義務を優先させて、Aの無罪を主張することができるのか問題となる。

⑴ この点について、犯罪事実の挙証責任は検察官にあること、及び依頼人の意思を尊重(22条1項)する必要があることから、誠実義務が真実義務に優先されると解する。もっとも、弁護士の使命に社会正義の実現(1条)があることにかんがみ、虚偽の事実により、殊更に真実をゆがめるような主張をすることは許されないと考える。

⑵本件においては、Aの弁護士にかかる事情は認められず、Aの意思を尊重して無罪の主張をすることができる。

 

第5 設問5について

1 Bは証人尋問において、B自身の審理における被告人質問と異なり、本件被疑事実に関するAの関与について否認している。

そこで、検察官は、B自身の公判期日における供述を記載した公判調書の証拠調べ(刑事訴訟法298条)を請求することが考えられる。

1 そして、Bのかかる供述は公判廷外における供述でAの犯人性という要証事実との関係で、その内容の真実性を立証するものであるため、伝聞証拠(320条1項)にあたる。そして、弁護士が不同意(326条)しているため、証拠能力は原則として認められない。

3 そこで、検察官としては、Bの供述が伝聞例外(324条2項、321条1項3号)にあたるとして証拠能力が認められると主張する。

⑴ まず、BはAとの間で共犯者であるが、Aとの間ではなお「被告人以外の者」である。そして、BはかたくなにAの犯行への関与を拒み「供述不能」にあたる。また、共犯者たるBの供述は、Aの犯人性を証明するうえで「その供述が犯罪事実の存否に欠くことができないもの」といえる。さらに、共犯者たるAを庇うために供述を拒否していると考えられ、また、Bの供述は他の客観的証拠とも整合しているため、「特に信用すべき状況の下」でなされたといえる。

⑵よって、伝聞例外にあたり、証拠能力が認められる。

 

 

 

 

 

自己採点(去年総合C、おそらく単体B)

B+

最後の伝聞例外で失敗した。最初、裁面調書で書いていたが、署名押印のところで、あれ?Bって署名押印してないよな。というか、公判廷の証言だから伝聞証言じゃないか?そうしたら、特信性の要件も書けるし。という謎理論に走ってしまった。ただ、概ねできているので、Bくらいはもらえると考える。

 

感想

去年よりは簡単だった。やっぱり、刑事実務基礎は過去問から出る。

令和元年予備試験論文問題再現答案ー刑訴法ー

第1 設問について

1 本件勾留請求の適法性について検討する。

⑴ 勾留請求においては、同一の被疑事実について逮捕を前置することが求められているところ(逮捕前置主義)、甲は通常逮捕状により逮捕された同一の被疑事実について勾留請求がなされている。

⑵ 次に、通常逮捕された令和元年6月6日午後9時10分から「48時間以内」(刑事訴訟法203条1項)に甲はH地方検察庁検察官に送致されている。そして、検察官に送致された同月7日午前8時30分から「24時間以内」(205条1項)に甲の勾留請求がなされている。

⑶ よって、本件勾留請求は適法である。

 

2 もっとも、先行する任意同行が実質的逮捕といえないか。実質的逮捕にあたれば、令状主義(憲法33条、199条1項)に反し違法となるため問題となる。

⑴まず、任意同行については、本人の意思に基づくものであれば、任意捜査(197条1項本文)として許される。もっとも、任意同行に応じるか否かについて本人の意思が制圧されており、強制的に連行するような場合には実質的逮捕に当たり、令状主義及び法(203条以下)が身体拘束につき厳格な規制を設けた趣旨が没却されててしまうため許されないと解する。

そこで、①同行の時間・場所、②同行を求めた態様、③同行を求める必要性及び④被疑者の態度等諸般の事情を総合的に判断する。

⑵ 本件では、午前3時頃という深夜に警察署まで同行を求めており、本人の意思が制圧されうる状況にあったようにも思える。もっとも、甲は遅くとも午前2時30分頃には路上に徘徊しており、その存在を認めたPらにより職務質問警察官職務執行法2条)が適法になされていたことを踏まえると、このような時間帯に警察署への同行を求めることもやむを得ないといえる(①)。そして、甲は本件事件の犯人の人相及び着衣が酷似しており、また、甲が自らポケットから落としたクレジットカードはV名義のものであり、本件事件の被害品である。本件事件は、6月5日午後2時頃発生しているところ、それから12時間程度しか経っていない中で甲が本件事件の被害品を所持していること及びその所持の理由が納得のいくものでないことをかんがみると、本件事件の犯人である高度の嫌疑があり、同行を求める必要性は極めて高いといえる(③)。

もっとも、甲は「俺はいかないぞ。」などど言って、パトカーの屋根を両手でつかんで抵抗していることを踏まえると、甲が同行に応じない意思は明確であった。(④)。それにもかかわらず、抵抗する甲をむりやりパトカーに乗車させて、両脇を警察官で固めて警察署に連行しており、その態様は強度である(②)。

以上より、甲には本件事件の犯人である高度の嫌疑が認められるものの、甲が明確に同行に応じない旨の意思表示をしているにもかかわらず、Pらはその意思を制圧して連行しているため、実質的逮捕にあたる。

3 そのため、先行する身体拘束が実質的逮捕にあたり違法となる場合、後行する勾留請求にどのような影響が生じるのか問題となる。

⑴ 被疑者の身体拘束に際し、裁判官による事前審査を求め、もって被疑者の人権に配慮した令状主義の要請は厳格に貫かれるべきである。もっとも、常にこれを認めないとすると捜査の実効性確保の観点から相当ではない。

そこで、先行する手続に重大な違法がある場合に勾留請求が認められないものと解する。

⑵ 本件では、無令状の逮捕であり、令状主義に反するため、その違法は重大であるように思える。もっとも、実質的逮捕時において、甲には本件事件に関する高度の嫌疑が認められていた。そうだとすれば、Pらは通常逮捕の逮捕状を請求した上で、甲に任意同行に応じるよう説得しつつ留め置くこともできたといえる。また、実質的逮捕を起点としても、勾留請求までの時間的制約(203条、205条)は守られていた。

第2 以上より、先行する手続には重大な違法は認められず、本件交流請求は適法である。

 

 

 

自己評価(昨年D)

B~A-

重大な違法の判断基準として緊急逮捕といえる場合に該当するかということは頭にあったが、本件では緊急逮捕の要件を満たすまでの証拠なく、そのためPらは任意同行という形をとったように思われる。

ただ、犯人の外見と酷使しており、被害品を理由もなく所持していたことは通常逮捕状の要件には当てはまるといえ、その後に被害者の供述を追加して通常逮捕していることを踏まえると、本件交流請求を認めないのは違和感を感じた。

本件では、甲が任意同行に応じなければ、通常逮捕状の請求をして、その発布がなされるまで頑張って留め置くべきであり、その手段を誤ったことにすぎないこと、通常逮捕自体は適法に前置していること、時間制限を守っていることを踏まえれば適法にすべきような気がする(採点者たる実務家の観点から見て)。

ただ、昨年はD評価であり、本当のところはよくわからない。

 

感想

伝聞は実務基礎で聞くという方針なのだろうか。ただ、いずれにしても、刑事実務基礎で包括的に手続が問われるので、万遍なく勉強する必要があると思われる。

敢えて来年を予想するとすれば、さすがにそろそろ捜索・差押えがくるのではなかろうか。

令和元年予備試験論文問題再現答案ー刑法ー

第1 甲の罪責について

1 Aに対して、本件土地を売った行為について

⑴まず、甲はⅤから本件土地に抵当権を設定する代理権を付与されているにすぎず、「自己の占有」(刑法252条1項)とはいえないため、横領罪(252条)ないし業務上横領罪(253条)は成立しない。

⑵次に、「背任罪」(253条)の成否を検討する。

ア 甲はⅤから本件土地に抵当権を設定するよう依頼されており、「他人のためにその事務を処理する者」にあたる。

イ また、甲は自己の借金を返済するためにかかる行為をなしており、「自己若しくは第三者の利益を図」る目的を有している。

ウ そして、Ⅴの依頼に反して、Aに対して、本件土地を売ることは、「その任務に背く行為」にあたる。

エ もっとも、本件土地の売買契約は、他人物売買であり、表見代理に関する規定の適用はないため、Aは本件土地の所有権を失っておらず、「財産上の損害」は生じていない。

オ 以上より、背任未遂罪(247条、250条)が成立する。

2 本件土地の売買契約において、「Ⅴ代理人甲」と署名した売買契約書を交付した行為について、私文書偽造罪(159条1項)及び同行使罪(161条)の成否を検討する。

⑴まず、本件売買契約書は、本件土地の売買に関する文書であり、「義務若しくは事実証明に関する文書」にあたる。

⑵次に、甲は、権限がないにもかかわらず、売買契約の成立たる「行使の目的で」、Aたる「他人・・・の署名」をなしており、「偽造」にあたる。

⑶以上より、私文書偽造罪が成立し、また、本件売買契約書をAに交付して「行使」しているため、同行使罪が成立する。

3 甲がⅤを殺した行為について、強盗殺人罪(240条)の成否を検討する。

⑴まず、甲が「強盗」(236条2項)といえるか検討する。

ア 甲は、Vの首を絞めた上で海に落としており、Ⅴの反抗を抑圧するに足りる程度の「暴行」を加えている。

イ 次に、強盗利得罪の「暴行」は、財産上不法の利益を得るための手段としてなすことをその特質としているため、かかる「暴行」によって、「財産上不法の利益」を一時的でなく確定的に得ることができることが必要である。

本件では、甲が本件土地の登記済証や白紙委任状を所持していることを踏まえると、Aが死亡することにより、代理人として振る舞うことができる結果、売却代金2000万円を確定的に得ることができる。よって、「財産上不法の利益」を得る手段として行ったといえる。

ウ したがって、甲は「強盗」にあたる。

⑵甲は殺意をもってVを殺害しているところ、かかる場合も「死亡させた」(240条)といえるか。

ア 同法の趣旨は、強盗がなされた場合に人が死傷する結果が生じる危険が特に高いためこれを防ぐ点にある。そうだとすれば、殺意をもって殺害するという刑事学上顕著な類型を除くことは同法の趣旨に反するといえる。

イ よって、この場合も「死亡させた」といえる。

⑶もっとも、甲はVの首を絞めて(以下「第1行為」という。)殺害し、その死体を海に落とす(以下「第2行為」という。)ことを計画し、その計画通りの認識を有しているところ、現実には、第1行為の時点ではVは死亡しておらず、第2行為によりVの死亡という結果が発生している。そこで、このような場合にも、甲に故意(38条2項)が認めることができるのか問題となる。

ア 実行行為とは構成要件的結果発生を有する現実的危険性を有する行為をいう。そこで、第1行為と第2行為が同一の法益侵害に向けられており、時間的場所的に接着している場合には、1つの実行行為にあたると解し、行為者の認識した因果経過と現実の因果経過の不一致は、因果関係の錯誤として処理すべきである。

イ 本件において、第1行為及び第2行為は、いずれもVの生命という同一法益の侵害に向けられているものである。また、第1行為後に第2行為を行う上で障害となるような事情は存在しておらず、時間的場所的接着性も認められる。

 よって、1つの実行行為といえる。

ウ そして、故意責任の本質は、規範を認識しているにもかかわらず、それに従わない反規範的人格態度に対する道義的責任である。そして、規範は構成要件として与えられており、因果関係も構成要件要素である。そのため、認識した因果経過と現実の因果経過が構成要件において符合すれば、故意を認めることができる。

 本件では、甲の認識した因果経過と現実の因果経過は構成要件において符合しているため、故意を認めることができる。

⑷ 以上より、強盗殺人罪が成立する。

4 なお、甲はⅤの首を絞めて失神させるという実行行為を行っており、Vを「保護する責任のある者」(218条)にあたり、Vを海中に捨てた行為について「遺棄」したとして保護責任者遺棄罪が成立するようにも思える。もっとも、甲はVが死亡しているものと認識しており、主観的には死体遺棄罪(190条)の構成要件に該当する。そして、前者は個人に対する罪、後者は社会に対する罪として、その保護法益は異なるものといえ、構成要件が重なり合うものとはいえないため、両罪はいずれも成立しない。

5 以上より、甲には背任未遂罪、私文書偽造罪及び同行使罪が成立して牽連犯(54条後段)となり、強盗殺人罪併合罪(45条)となる。

 

 

 

自己評価(去年A)

B+~A

概ね論点は書けたと思う。

後で確認したら、本件では「法律上の占有」が認められ、横領罪を検討すべきであった。本番では、昨年横領罪出たし、抵当権だし、表見代理が不成立というところが「財産上の損害」とリンクすると思い、背任罪で検討した。ただ、ここが背任罪で処理しても致命的にはならないと思われる。むしろ、最後の最後に保護責任者遺棄罪を出したが、1つの行為とした先の記載とズレているように感じ、記載すべきでなかった。また、「財産上不法の利益」にあたるかについて、Aは海外に住んでいたことも指摘できたら良かった。

4ページの最後の行まで書き切ったパワーを評価してもらい、Aであることを望む。

 

感想

刑法はヤマ当てというより基本学力が問われている。

ただ、背任罪や文書偽造罪あたりの出題については、各予備校は予想しており、やはり予備校の直前答練や模試の力は偉大であると感じた。

来年は詐欺罪、共謀共同正犯が熱い。