昨年1.3点差で落ちた受験生の令和元年予備試験再現答案

平成最後の予備試験論文試験で後1.3点差で落ちました。忘れないうちに令和元年の予備試験論文再現答案を記録します。

令和元年予備試験論文問題再現答案ー行政法ー

第1 設問1について

1 Cに原告適格が認められるためには、「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法9条1項)にあたることが必要がである。

 そして、基準の明確性の観点から、「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。

この点について、当該処分の根拠法令が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個人的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、「法律上保護された利益」にあたる。以下、Cは本件許可処分の名宛人ではないため、同条2項に従って検討する。

⑴まず、Cは自己の①良好な景観を享受することを害されない利益及び②不眠により健康を害されない利益を主張することが考えられる。

⑵そして、本件許可処分の根拠法令は、条例6条である。同条は、都市計画区域(同条1号)において広告物等を表示又は設置する場合に許可を受けることを求めている。また、同条5号において、「良好な景観を形成」するために必要と認めてしている地域又は場所に対して許可を受けることを求めている。さらに、同条1条において、「良好な景観を形成」することを目的としている。

規則は、条例の委任を受けてその内容を具体的にする法規命令であり、関係法令に当たる。規則別表4において、広告の色等を規制して「良好な景観」を維持するよう求めている。また、別表第5において、広告の大きさ及び距離制限を定めて、広告によって良好な景観が損なわれないよう配慮している。

以上を踏まえると、条例及び規則は、広告によって良好な景観を損なわれない利益をその広告から一定の距離に居住する地域住民の具体的利益として保護しているといえる。

これに対して、A県からは、条例及び規則は、広告に一定の基準を求めているが、それは良好な景観を損なわないために過ぎず、その広告を目にすることにより健康上の被害が生ずることを防ぐ目的までは有していないとの反論が想定される。

確かに、条例及び規則の規定からは、その広告を目にすることによって健康上の利益を保護していることを読み取ることはできず、②の利益は保護されていないといえる。

⑶次に、①の利益が個々人の個別的利益として保護されているといえるのか検討する。

この点について、本件許可処分により、本件広告物が設置されたことにより、Cの良好な景観を享受する利益が損なわれている。そして、本件広告物は、隣地に居住するCについて、日常的に良好な景観を享受する利益を直接的かつ継続的に侵害しており、その侵害の程度は重大である。

⑷したがって、個々人の個別的利益として①の利益は保護されているといえるため、Cは「法律上の利益を有する者」にあたる。

2 以上より、Cに原告適格が認められる。

第2 設問2について

1 Bは、本件取消訴訟において、基準1は条例の「良好な景観を形成」するという趣旨目的に反しており、委任の範囲を超えるため無効であると主張することが考えられる。

⑴条例は9条において,6条1項の許可の基準を規則に委任している。そして、規則の別表第5二号(ハ)たる基準1は、鉄道に隣接する広告について一定の距離制限を設けている。

もっとも、条例が鉄道に隣接する広告について距離制限をとることを認めた趣旨目的は、「鉄道等から展望できる地域」(条例6条2号)からもわかるように、鉄道利用者の良好な景観を享受する利益を損なわないためである。

そうだとすれば、隣接する鉄道が地下鉄である場合には、その利用者にとって広告物を見ることは不可能であるため、これを規制することは条例の趣旨目的に反する。

以上より、基準1は、地下鉄道と地上鉄道を区別することなく、一律に距離制限を定めており、条例の趣旨目的に反しているため、委任の範囲を超えており無効といえる。

2 したがって、Bのかかる主張は認められる。

 

 

 

 

評価(昨年C)

D~C

景観利益については、瀬戸内海の問題の処理手順が意識にあり当然に認められるものと思っていたが、公益としての性質があり、本件では地域住民への手続き関与が定められていないため専ら公益目的ではないかという点に配慮すべきであった。そして、このことについて、反論で主張すべきであったにもかかわらず、特段検討することなくあっさり個々人の個別的利益と認定してしまったのは痛い。また、②の利益は景観利益が当然に認められるからあっさり切ってしまったが、一応、条例に「公衆に対する危害」と記載されていたことから、それが具体的にどのような危害なのかを論ずる必要があったかもしれない。

ただ、本件広告物が設置されたことにより、Cの良好な景観を享受する利益が損なわれている。そして、本件広告物は、隣地に居住するCについて、日常的に良好な景観を享受する利益を直接的かつ継続的に侵害しており、その侵害の程度は重大である。

と書き、景観利益がCの個々人の個別的利益と認定していること及び設問2は当り障りなく書けたことからCであることを望む。

 

 

感想

一昨年原告適格、昨年処分性だったため、原告適格を検討させるとしても、義務付けや差止めの中で端的に問われると思っていたが、予想に反してメイン論点できた。

来年の予想としては、隔年で出題される行政手続と司法試験では頻出の裁量基準違反、違法性の承継当りが熱いと思われる。